歯の移植って簡単にできるの?
答えは 「できません!」(できる場合ももちろんあります)
下の写真は親知らずを抜いた直後です。歯の根の周囲に満遍なく歯根膜が残っています。
下の写真の親知らずでは一部歯根膜がはがれ落ちてしまっているのがわかります。
歯の移植を成功させるにはいくつかの秘訣が有ります。
1、移植歯の全周に歯根膜が存在
2、移植歯の全周を密に囲める歯肉が移植する場所に存在
3、移植歯の歯髄腔、神経の走行が単純
端的に言えば上記3つを兼ね備えていれば成功率は高くなります。
しかし多くの移植歯はとくに1と2に多少の問題を持っています。
問題のある親知らずは移植できない?
答えは「出来ます!」
正確には「出来る場合も多々あります!」ですね。
一番の問題は1!、歯根膜の欠落です。その親知らずを移植した場合に生じる現象としては、移植歯が骨と結合してしまういわゆる(アンキローシス)です。通常健全な天然歯は歯根膜が存在し骨とはその膜を介してつながっているわけで、結合はしておらず、従って矯正治療などによって歯を動かす事が出来るのです。
言い換えればインプラントと似た様な状態、まったく動きません。この現象は全ての移植歯に対して術前に予測する事は難しいのですが、それを想定し、支障のない位置になるべく移植し固定します。
下の写真は移植歯よりも移植する場所が広いため、移植した歯とその奥歯を部分矯正治療によって手前に動かそうと試みたものです。
歯根膜の欠落はほとんどありませんでした。
結果的には理想的な位置とまではいきませんでしたが患者さんにも満足をしていただけました。
(移植手術から部分矯正治療、セラミッククラウン装着まで全て保険外(自費)治療)
一方で歯根膜の欠落が大きい場合には当然ながらその周囲に骨は誘導されないので移植歯自体が歯周病と同様の症状を呈する場合もあります。
横になっている親知らずの直前の神経の無い歯が割れていらっしゃった患者さんです。
その歯を抜いて横向きの親知らずを移植しました。
移植後3ヵ月
レントゲンを見ても移植した親知らずの周囲に骨の欠損が確認できます(向かって左側)
このままでは膿漏状態が深刻化し歯が抜け落ちる可能性が高いために、歯周組織再生治療(骨を再生する処置)を施しました。
歯茎を開いた状態、移植した歯の後方(向かって左側)に大きな骨欠損が認められます!
歯周組織(骨)が再生するための膜を設置
縫い合わせ
術後2年の比較。
移植直後レントゲンと口腔内写真
術後2年の口腔内写真およびデンタルレントゲン写真と3D CT写真による評価です。
過去に入れた上の派のブリッジもしょっちゅう取れるとのことで、歯周外科治療による歯冠長延長術等で最適な状態に環境を整え、技工士入魂のセラミックブリッジをお入れしました。
非常に良い状態に改善が出来ました!現在のところ歯周病も改善し安定を保っています。
この方は前の歯との隙間は気にされていなく、噛み合わせに大きな障害となっていないため、セラミッククラウンは装着していません。
このように歯の移植と言ってもただ単純に歯の欠損している場所に歯を移し替えるだけでは済まず、歯周組織再生治療を応用しより良い状態にする事も可能であります。
自家歯牙移植とは、規格化されていないご自身の大事な歯を、長期的な安定を得るために複雑な治療方法を駆使し、繊細な手技によって行う難しい処置である事を同時にご理解下さい。
自家歯牙移植のお問い合わせもお気軽にどうぞ。
院長 健造
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